痛ましい児童虐待が報道されると、その背景にDV(配偶者に対する暴力)の存
在が指摘されることがあります。同じ家族の中で、児童虐待とDVが同時に発生
しているケースは多く、児童虐待とDVはコインの両面だと言われます。
さらに考えを進めて、子ども自身に向けられた暴言や暴力でなくても、子どもが
DVを目撃することは、「面前DV」といわれ、それ自体が児童虐待にあたりま
す(児童虐待防止法第2条第4項)。近年の研究で、「面前DV」が、子どもの
脳を損傷させることが明らかとなりました。身体的DVの場合の目撃と比較して、
暴言や威圧などの精神的DVを目撃することによる悪影響が大きいこともわかっ
てきました。
しかし、DVの存在には気付いても、子どもに対する暴力はないからという理由
で、被害者がDVを受容し、我慢し続けるケースは多く、子どもが長期にわたっ
て「面前DV」にさらされた結果、青年期以降になって精神的なトラブルを生じ
てしまうこともあります。
子ども達が不必要な傷つきで、人生を台無しにしてしまうことがないよう、家
族は互いの人格を尊重しあい、安心な環境を守ることがわたしたち大人の役割だ
といえるでしょう
弁護士 岡村晴美