Q 障害のある人への「合理的配慮」の提供が義務化されたと聞いたのですが。
A 平成28年4月施行の「障害者差別解消法」で、障害のある人に合理的配慮をしないと差別にあたるとされました。合理的配慮の例として、車椅子利用者のために段差に携帯スロープを渡すなどがあります。民間事業者は努力義務となっていましたが、昨年の法改正で行政と同じ法的義務となりました。3年以内に施行されます(なお、雇用の場面では民間でも既に法的義務です)。
合理的配慮は、心配りやマナーではなく、過重な負担でない限りしなければならない法的義務になるのです。合理的配慮は、特定の具体的場面によって内容が異なる個別的の高いものであり、その障害のある人の意思を尊重する必要があります。例えば、視覚障害のある学生に配慮しようとした教員が、よかれと思ってその学生のみを授業中にあてなかったという特別な取扱いをしたところ、実はその学生は他の学生と同じように教員から質問してほしかったという場合、教員にとっては合理的配慮のつもりでも、聴覚障害のある学生にとっては障害を理由とした不当な差別的取扱いに他なりません。その人が何を必要としているのか、ニーズの把握のためのコミュニケーションと建設的対話が大事ですね。
弁護士 髙森 裕司